独自のコミュニケーションを活かして
アパレルの仕事からタクシードライバーに
もとは長年アパレル関係の販売スタッフとして働いていて、ロンドンに4年間勤務したこともありました。しかし、会社の業績が悪くなってきて将来の不安を感じるようになったんです。そこで、当時住んでいた家が営業所と近所だったこともあり、10年前に日の丸交通に転職しました。最初は軽い気持ちでしたが、第二種運転免許を取ったら俄然やる気が出てきましたね(笑)。
大切なのは英語力よりコミュニケーション
3年前に試験をパスしてからは、主に外国の方向けの観光タクシーのドライバーとして勤めています。
もともと英語には興味があり、アメリカ人の知り合いの家で英会話を習ったり、イギリスでは学校や職場で英語を使ったりしていました。そういった英語力を生かして観光名所の基本的な説明をすることはもちろんですが、いかにお客様が楽しめるかを念頭に置くようにしています。深い知識ではなく、相手のニーズを満たすこと。単なる英会話ではなくコミュニケーションをとることが大事だと思います。
私は特に事前のヒアリングを重視しています。日本食やお寺に興味があるのか、どんな芸術が好きなのか、長旅で疲れていないか、お腹は減っていないか……国籍に関わらず相手の情報を引き出し、合わせることが大切です。
日本での時間を楽しんでもらうために
以前、お昼を食べていないという外国人観光客の方を乗せたことがあり、「お寿司のドライブスルーはないか」と訊かれました。その方はお寿司が食べたいようだったのですが、時間が限られていた。
そこで、テイクアウトのお寿司を車内で食べながら観光をしたんです。するとそのお客様が「車の中でお寿司を食べながら観光することが、日本で一番したかったこと。とても嬉しい」と言ってくれました。常にお客様のコンディションを観察していると、こういったサービスの提供もできるんです。
スカイツリーを見たいというお客様も多いですが、天気が悪いとあまり楽しめないですよね。そういった場面で機転を利かせて、何がしたいのかを察知する観察力が勝負です。
毎日が旅行のような日々
ロンドンに長く住んでいたので、お客様がイギリス人だったら、ロンドンの街に例えてお話しています。例えば隅田川なら、ロンドンのテムズ川のようなもの。金融機関や証券会社が密集する大手町や茅場町は、シティ・オブ・ロンドン。銀座はチェルシー、六本木ならナイツブリッジ。こんな風に説明してあげると分かりやすいですよね。
観光タクシーは毎日旅行しているようで体力を使います。でも、その分面白いこともたくさんありますよ。これからは一層欧米の方からの需要が増えると思うので、世界中の人と話す事ができる英語を使って、千差万別のニーズにお応えしていきたいですね。